大正アンティークチェアのリメイク-No.08

岐阜県郡上八幡での町家再生で出てきた椅子のリメイクを紹介します。

特徴

大正時代椅子の修理
椅子の張り替え
ハギレの本革の活用

椅子のリメイク前

この椅子は大正生まれ。現代の椅子と比べ少し座面が低くのが印象的でした。現代人との体型の違いが分かり、当時の面影を感じずにはいられません。

また、長い間椅子があった家屋は空き家であり、多々破損がありました。破れた座面からは藁が見え、この頃はクッション材に藁が使われていたのでしょうか?初めて目にします。

聞くところによると、大正時代に国内は椅子やテーブルなどの洋風家具の生産が始まり、ここ飛騨でも家具作りが芽生たようです。飛騨には豊富にあったブナ材を利用し、開発した曲木の技術を駆使し椅子生産が盛んになった時期とのことです。

話は変わりますが、カフェやカレーやコロッケなどのも、この頃に誕生したようです。新しい生活様式がどんどん生み出された時代なんですね〜この椅子も人々のライフスタイルに変革を与えていたと想像すると何だか愛おしくなります。椅子たちよ、現代まで残っててくれて、ありがとう!

さて、今回依頼されていた椅子は2脚

①カーブを描いた包み込むような曲木の椅子。なんと脚が3本!

②四角い椅子。どこか教会の椅子で見たことあるような背もたれです。

主な修正箇所

・座面の下地直しと張り替え

・構造部の破損の修復(貫の作成、脚の修復)

・塗装&クリーニング     など

脚部破損の修復

今回のチャレンジの一つが、破損した脚の修復です。

座面生地を剥がすと脚が抉られていました。何かにかじられたのでしょうか…座面と脚が物理的に接着していません。座面の生地でなんとかくっついているように見え、下の貫で繋がっていただけでした。これぞ、首の皮一枚というヤツ!

脚1本を新調することも検討した末、欠損部を木工パテでつくり繋ぎました。強度もバッチリ、コスト面もGoodです。

最終仕上げは細かく塗りを使い分けました。ステイン、ラッカー、オイルと下地の状況に合わせて塗り、そしてクリーニングと再塗装です。

また、3本脚チェアの貫の1本は折れてなくなっており、残っていた1本の貫材をコピーして再生しております。椅子の補強はよく依頼があるですが、「これぞ修復!」と感じる達成感があります。

端切れ牛革のアップサイクル 張り替え

アンタッチャブルな世界なのだと思いますが、木工の業界では沢山のレザーの端切れが使われずに処分されています。レザーつまり、牛革です。端切れなので、一枚では生地として足りません。そこでパッチワークにしました。

完成は見ての通り、色の異なる端切れレザーがスタイリッシュで特徴的な印象のチェアとなりました。それぞれ2脚の座面を同じ様にパッチワークにし、元々は形の異なる椅子でしたが、統一感が出ます。

長い年月を共に同じ家屋で過ごした二脚が、これで正真正銘の兄弟のようです(笑)

郡上八幡のArt Hotel 木ノ離さんへ

今回は、木ノ離 Art & Hotel Kinoriさんのコンセプチュアルな椅子のリメイクとなりました。

一般のお宅の椅子の座面をこの様に張り替えるだけでとても印象は代わります。機会があれば、皆さんのお宅にある椅子をパッチワーク椅子にリメイクしませんか?

ご依頼いただきました「木ノ離 Art & Hotel Kinoriさん」はこちら